山口 武典氏
社団法人 日本脳卒中協会
中山 博文氏
社団法人 日本脳卒中協会
専務理事・事務局長
(発言順)
<対談記事>
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日本脳卒中協会の社会啓発活動について中山先生にご紹介いただきます。
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日本脳卒中協会は1997年に設立され、一般市民や患者・家族、医療関係者に対して脳卒中予防の啓発活動を行ってきました。2008年以降は、ACジャパン(公共広告機構)の支援キャンペーンとして、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の4メディアを通じた活動も行っています。
また、市民講座やシンポジウム、街頭イベント、標語ポスターの掲示などの活動も全国各地で行っています。
一般市民啓発の目的は、①リスク因子の認識、②生活習慣の改善、③リスク因子がある方への受診のよびかけ、④発症時の救急対応の4つで、日本脳卒中協会では「脳卒中予防十か条」(表1)を作成して、脳卒中の主なリスク因子のコントロールと脳卒中を発症した場合の救急対応の重要性について唱えています。
一方、患者・家族に対しては、リスク因子の管理や生活習慣の改善に加え、抗血栓薬を継続して服用することの重要性や抜歯、内視鏡検査、手術時の対応などについても情報提供しています。さらに、脳卒中が起こってしまった場合は、できるだけ早く治療を開始することが重要なため、脳卒中の急性期症状をわかりやすくまとめた「脳卒中5大症状」(表2)の普及にも努めています。そして、このような症状が現れたらすぐに救急車を呼んで、適切な処置を受けていただく必要があることを注意喚起しています。
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そのような活動に加えて、今回新たに心房細動患者における脳梗塞予防プロジェクトも行っていくことになりました。矢坂先生にご紹介いただいたように、心房細動患者が発症する脳梗塞は重症であるといえますね。中山先生、具体的な内容について教えてください。
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心房細動患者における脳梗塞予防プロジェクトの概要を表3に示します。
医師に対してはベスト・プラクティスをさらに普及させるため、教育講演会を開催します。心房細動患者には脳梗塞予防の必要性とともに、CHADS2スコアを使用してご自身の脳梗塞リスクを認識していただいたうえで、脳梗塞予防のためには定期的に医療機関を受診して抗凝固療法を継続する必要があることを啓発していきます。
また、脳梗塞/TIA既往のある心房細動患者に対しては、抗凝固療法による再発予防の重要性について、しっかり教育していく必要があります。
さらに今後の課題としては、一般市民に対する啓発も必要と考えています。心房細動であると自覚していない方は多いと思いますので、心房細動の初期症状に関する情報を広く発信して早期発見を促します。
そして、心房細動の疑いがあればすぐ医療機関を受診して「将来の脳梗塞を予防しよう」というプロジェクトを行っていきたいと思います。
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今回は心房細動患者における脳梗塞予防の重要性と日本脳卒中協会による脳卒中予防の啓発活動の実情および今後の展開についてお話しいただきました。
ひとりでも多くの心房細動患者を脳梗塞からまもるためには、一般市民・患者への啓発活動を継続して行っていくことが重要であり、特に、心房細動患者における脳梗塞予防のためには抗凝固療法が必要不可欠であることを広く普及させることが大切だと思います。
そして、われわれ医療関係者は抗凝固薬の適正使用に努め、少しでも多くの患者の命と生活をまもるために尽力していく必要があると思います。本日はありがとうございました。