JSA 公益社団法人 日本脳卒中協会 The Japan Stroke Association Boehringer Ingelheim

Q8.脳梗塞予防に関するメッセージを

A


熊本市民病院 神経内科部長
橋本洋一郎氏

研修2年目に心臓をやるか脳をやるか悩んでいた。しかしその頃日本でも心臓はかなり治せる状況が出てきたと。PTCAとかアブレーションとか始まっていた頃なんですね。そういう時代に熊本済生会病院に心臓の勉強に行ったにも関わらず、脳梗塞を持たされて。尊敬している循環器の早崎先生、研修医にもお話しをしてくれる先生からは「頑張れば脳梗塞もこんなに良くなるんだ」と言われ、研修終わる前に勉強して皆の前で発表するテーマを「君は脳梗塞」と決められました。大学病院に行って調べて発表した時に言われたのは「脳梗塞は本当に治療法が無いんだね」。以来、急性心筋梗塞なみに脳梗塞を治療できるようにしたい想いで29年間頑張ってきて、救急病院に勤めているわけですが、私たちがどんなに頑張っても予防に勝る治療はないんです。特に心原性は非常に重症度が高いので、心房細動の患者さんを早く見つけて、きちっとした脳梗塞予防を地域全体、日本全体で取り組んでほしい、私たち専門医が暇になるくらいがいいというのが願いです。

最近、市民公開講座でも言うんですが、ありふれた病気でお医者さんが一番なりたくない(分野)を尋ねると、みなさんガンだと思っているんですね。違うんですよ。お医者さんに聞いてみると脳卒中が一番嫌だと。何でかと言うと場所が悪ければ一発で歩けない、しゃべれない、食べれない、飲み込めない、もう一丁つくんです、死ねない。鼻から管を入れられて長々と生きざるを得ない、そういうのは辛いわけです。ガンは助からないと思ったら半年、死ぬ準備ができる訳ですよ。脳卒中は死ぬ準備もできない。脳卒中を専門にしている身でも予防に勝る治療は無いと言うことで、私は脳卒中協会の活動のなかでも予防に力を入れているところです。これは救急で悲惨な状況を見ているだけに言えること。後は親父の件では、新しい経口抗凝固薬が出来ていたら後10年あるいは15年生きていられたかなと思いますね。